A wonderful place 3



って、あの時は本気で思ってたんだが・・・・。
スコールが嘆息しながら思う。
嘘じゃない。あの時は本気で本気に「ゆっくりやっていこう」と思ってたのだ。焦らず、落ち着いて進んで
行こうと、固く決意してたのだ。

だけど、寮に戻ったら。

スコールがまた嘆息する。
だけど、寮に戻ったら、そんな殊勝な気持ちはあっと言う間に掻き消えてしまった。
ゼルが欲しくて欲しくて堪らなくなってしまった。
・・・・それについては、自分だけの責任じゃないと思う。
スコールが誰にともなく胸の中で言い訳する。
だって、自分は我慢していたのだ。辛い片思いの間中、よがるゼルの痴態を想像だけで我慢してたのだ。
それなのに、目の前でこんな光景を見せられれば。


帰る時になって、初めてゼルの踝が使い物にならないくらい腫れているのに気が付いた。
いい、手伝わなくていい、と必死で断るので、シャワーは自分で浴びさせた。出てきた途端、掻っ攫うように
ベッドに連れ込み、治療を始めた。
「・・・・・・っ・・・痛・・・」
体中から石鹸のいい匂いを漂わせながら、ゼルが切なげに眉を顰める。薬液をたっぷりと含ませた脱脂綿が
触れる度に、短パンから覗く色素の薄い脚をビクリと震わせる。大丈夫か、と尋ねると、うん、と痛みに潤んだ
瞳で縋るように自分を見つめる。
思わず、わざとか、と言いそうになった。そうじゃなきゃ、卑怯だ。何でそんな、思わせぶりな態度をとるんだ。


・・・・違うんだろうな・・・・。
胸の中で溜息をつきながら思った。
違うんだろうな。きっと、本当に痛いだけなんだろう。格闘家のくせに割合痛みに弱いから、単に痛みを
伴う治療に怯えてるだけなんだろう。

でも、自分は違うのだ。

そういう仕草は、全部脳内で変換されてしまうのだ。自分はゼルが好きだから。好きで好きで堪らないから。
好きで好きで触れたくて。舐めたくて、触りたくて、追い詰めたくて。腕の中で、よがらせたくて。
そんな風に、自分はゼルを好きなのだ。
そして今、その相手が目の前にいる。しかも、自分を好きだと言っている。
我慢できる方がおかしい、ってもんじゃないか?


包帯の端を硬く結びながら、ゼルの脚にそっと顔を近づけた。そのまま、濡れる舌でなぞるように付け根
近くまで舐めあげる。
「・・・・・・!ひゃ・・・・!」
突然の行為に、ゼルがびっくりしたように首を竦める。
「え、ちょっ、止めろよ・・・・!!」
馬鹿、と赤くなってスコールの髪に手を埋めて押し戻そうとする。
「・・・・・嫌か?」
吐息のように、問い掛けた。赤らんだ顔が、朱を吐いたように一層真っ赤に染まる。
「い、嫌って言うか・・・!や、嫌じゃねぇけど、いや、ちょっ、ま、まだ早ぇえんじゃねーか・・・!?」
「・・・・早い?」
「お、おう。だっ、だって、きょ、今日そうなったばっかだし・・・!んでもう今日のうちにって・・・!」
心の整理とか、とわたわた焦るゼルの顔をじっと見つめて尋ねる。
「・・・早いから、嫌なのか?別に、俺とやるのが嫌、って訳じゃないんだな?」
「う?う、うん、そう。」
「・・・単に、速度の問題なんだな?やるにはまだ早すぎる、ってだけなんだな?」
低い声がもう一度、念を押すように確認する。
「そ、そう。な、ほら、やっぱまだ・・・」
「そうか。なら、俺がその問題を解決してやる。」
生まれついてのカリスマ、と評される美貌のガーデン責任者が、迫力のある笑顔でにっこりと宣言する。
「そんな事は、気にするな。」




トロトロと先端から染み出る液が、スコールの舌から滴る唾液と淫猥に絡み合う。
「・・・やだ・・・!も、やめ・・・!」
ゼルが半泣きで訴える。その瞬間、また腰がビクリと脈打った。
「・・・・・っあ・・・・や・・・!」
必死で首を振って放出を耐える。嫌だ。もうあんな事はしたくない。呆気なくいかされた最初の射精。
完璧に整ったスコールの頬に、堪え切れずピシャリとかけてしまった白い液体。それを長い指でゆっくりと
拭いながら、随分濃いな、と艶然と呟かれた時には、どうしようかと思った。恥ずかし過ぎて死ぬ。本気で
そう思った。

もう絶対あんな真似はしたくない。
そう決意してるのに、スコールの薄い唇は今の未放出が不満だったかのように、一層卑猥に自分の先端に
吸い付いてくる。
「っやだ・・・・!もう、やだってば・・・!!」
断続的な快感に震える掌で、スコールの逞しい腕をぎゅっと掴んだ。
「・・・・慣らさないと、辛いのはお前だぞ。」
スコールが僅かに唇を離して言う。
「・・・・だから・・・!!その指も抜い・・・・っぁ・・・!!」
ゼルが必死で首を振る。そうだ。辛いのは、淫猥に蠢く舌だけじゃない。同時に中に差し込まれた指が、時折
スイッチが入ったように自分の身体を刺激するのだ。
「・・・・!やぁ・・・・・っ・・ぁ・・・!」
自分の声とは思えないほど、いやらしく蕩けた声が喉から漏れる。中を刺激される時間が、どんどん長く
なっていく。それはスコールの指が、自分のポイントを的確に掴みつつあるからだ。殆ど絶望するような
気分でそう思った。
「っ・・・・あ・・・!!」
固く閉じた眼の奥から、快楽の涙が浮かんでくる。強引に大きく割られた膝が、ガクガクと震える。
「・・・・あ、あ、あ・・・・!」
自分の意志に反して、次から次に先走りの液がはしたなく溢れてくる。その先端を、スコールの赤い舌先が
残酷なほど優しく舐めた。


もう、いいかな。
切なげに喉を反して喘ぐゼルを見下ろしながら、スコールが欲情に沸騰する頭で思う。
どこもかしこも舐め尽した。熱く柔らかな唇も、赤く染まる首筋も。思ったより、ずっと感度の良かった
胸の突起も。辛そうに涙を零し続ける、可愛い下半身の欲望も。

本当は、下半身はここまで追い詰めるつもりじゃなかった。
ここはただ、進入の痛みを減らす為に、ひょいと口に含んだに過ぎなかった。
だけど、思った以上にゼルがいやらしく悶えるものだから、ついつい歯止めが効かなくなったのだ。

特に一回目の射精の後の淫らさときたら、自分の想像を遥かに越えていた。
「・・・・嫌だ・・・・や・・・!だめ・・・や・・・・ぁ!」
何故か頑なに放出を拒む細い身体をビクビクと痙攣させ、必死で自分から逃げようと腰を捩る。その動きを、
傷ついた右足が鎖のように封じ込める。その度、青い瞳に絶望したように浮かぶ澄んだ涙に、背中が
ゾクゾクと粟立った。既に勃起している下半身が、痛いくらい張り詰めていく。普段は子供っぽい、この
やんちゃな男が、こんな淫らに悶えるなんて、誰が想像出来るだろう。

渡さない。

滾るような欲望と、うねるような独占欲に、全身が焼けるように熱くなっていく。
渡さない。誰にも。全部。全部、自分のものだ。金色の髪も、海色の瞳も、この淫らな身体も。
その全部が、俺のものだ。

柔らかく解れた入り口から、ゆっくりと指を引き抜く。
あ、とまた辛そうに吐息を漏らすその顔に、下半身の充血が一層高まった。ぎゅっと強くゼルを抱きしめ、
待ちつづけた自分の欲望をゆっくりと押し込んだ。
「・・・・ぁ・・・・あ・・・・」
ずぶずぶと埋まっていく太い竿に、ゼルが薄い唇をパクパクと震わせる。さっきまでとは桁違いの圧迫に、
細い背中が苦しげにしなっていく。
「・・・・や・・・・っ・・・あ・・・や・・・」
「・・・苦しいか?」
熱く締め上げてくる内部に、息を切らしながら尋ねた。その声に、ゼルがうっすらと眼を開く。青い瞳から
ボタボタと涙を零し、縋るように自分からスコールの背中に手を回す。赤く上気した唇で、子供がしゃくり
あげるように、語尾を震わしながら訴える。

「・・・・も・・許し・・・スコール・・・も、いかせて・・・」


その瞬間、頭の中が白くなった。
ゼルの腰をがっちりと掴み、さっき刺激したポイントを掻き毟るように抜き差しする。
「・・・・・あ・・・!!・・・や・・!!」
ゼルが激しく首を振って叫ぶ。その度、熱い内部が生き物のように自分を締めてくる。頭の中に火花が
散った。一層早く腰を打ちつけた。あまりの熱さに、こめかみに汗が浮かんでくる。火傷しそうだ、と思った。
何て熱い。何て気持ちいい。こんな快楽を味わったら、もう二度と抜け出せない。
ゼルが、でる、と悲鳴のように叫ぶ。竿に電流のような快感が走った。ずしり、と貫くようにゼルの中を
深く突き刺す。
「・・・・・や・・・・あ・・・!!」
ゼルの先端から白い液体がドクリと飛び出す。その一瞬後、自分の精も解放された。






失敗したな。
スコールが密かに溜息をつきながらゼルを見下ろす。
「・・・だーかーらー、どうしたんだよ?さっきから。」
ゼルが困ったように首を傾げて自分を見上げる。その仕草があんまり可愛くて、また溜息が漏れた。
「・・・どうしても、行くのか?」
「どうしてもって・・・・。当たり前だろー?あいつら心配してるだろうし。」
ゼルが戸惑ったように言う。益々溜息をつきたくなった。

さっきまで、凄く幸せだったのに。
必要以上にゆっくりとゼルの包帯を巻き直し、必要以上にノロノロと食堂に向かい、いつもの倍以上かけて
朝飯を食った。部屋に戻れば、そんな直ぐに動かなくても、とどこかの怠慢スナイパーのように言い張り、
ベッドでゼルを後ろから抱きしめながら、特に興味も無い朝の番組を二人でくっ付きながら観た。まだセット
してない柔らかな金髪にうっとりと頬を摺り寄せ、今日はこのままずっとこうしていたい、と夢見心地で願った。

けれど、芯から単純な体育会系の恋人は、そんな甘い願い事には全く無頓着だった。
今日の運勢、とやらが終わると同時に、よし、と元気良く、自分を振り払って立ち上がる。
「じゃ、俺、ちょっと行ってくっから。」
「・・・・どこに?」
「あいつ等んとこ。」
けろりとした声で、さっぱりと答える。思わず眉を顰めた。
「・・・何で。」
「?何でって、あいつ等んとこ行って、ちゃんと帰ってきたぜって、言ってやんなきゃ。特にあいつとか。
ほら、お前に俺の行き先ばらした奴。」
お前、あいつに聞いたんだろー?と軽い調子で言いながら、既に靴の紐を結び直している。
「あいつ結構ビビリだからさー、俺が帰ってこないの、まじすっげーびびってたと思うんだよなー。多分、皆にも
触れ回ったと思うし。だから、早く安心させてやんなきゃ駄目だと思ってさ。」


まずい。
思わず片手で顔を押さえて思った。
後悔はしてない。人があれほど心配している時にグズグズと情報を出し渋るような奴には、当然の
報いだと今でも思ってる。
が、ゼルはきっと死ぬほどびっくりするだろう。
そのビビリな友人を、俺が殺しそうになったと知ったら。
それに、どうやら自分はゼルの友人達に快く思われていない。行けばきっと、待ってました、とばかりに
俺の悪口大会が始まるだろう。

口止めしとけば良かった。
微妙に見当違いの反省をしながら、スコールが思う。
失敗した。あそこでもう一歩、口止めまで駒を進めておくべきだった。気が急いていたせいで、詰めを
欠いてしまった。俺としたことが、大失敗だ。
自分の悪口を困惑しながら聞くゼルの姿を想像すると、寂しくなった。改めて、行かせたくない、と強く
思った。

行けば、戻って来ないかもしれない。
その悪口を聞いてるうちに、俺に嫌気が差すかもしれない。
湧き上がる不安と寂しさに、胸が重く締め付けられる。けれど、引き止める事は出来ない。そんな事をすれば、
益々不審に思われる。それに、今引き止めたとしても、いずれすぐにバレる事だ。
今更ながら痛感した。
ゼルの世界は、俺だけじゃない。この陽気な男には、居場所が沢山あるのだ。会いに行く相手が、沢山いるのだ。
分かっていたはずの事実に、みるみる心が沈んでいく。
そうだ。ゼルの居場所は、ここで無くたって構わない。
自分の元に帰ってくる必要なんか、全然無いのだ。

もう、こんな思いはしなくて済むと思ったのに。
ズキズキと痛む心臓に、強く唇を噛み締めて思った。
ゼルが自分を置いて遊びにいく度に、身を切られるように寂しかった。ずっと傍に居てればいいのに、と
拳を握り締めてその寂しさに耐えていた。
そんな切ない寂しさは、もう感じずに済むと思ったのに。




一体、どうしちまったんだろう。。
ゼルが眉を顰めて、俯くスコールの顔を眺める。
何なんだ。この凹みっぷりは。ちょっと出かけてくる、と自分が言った途端に、花が萎れるみたいに
元気が無くなってしまった。
さっきまで、べたべたと自分を抱きこんで嬉しげに瞬いてた長い睫毛。それが、今は深い溜息と共に
悲壮に伏せられている。元がクールに整ってる顔だけに、そういう寂しげな表情をすると、一層落差が
激しい。まるで、小さな子供のようだ。
一人では何も出来ない、甘えたで寂しがりやの小さな子供。自分はそんな子供を一人ぼっちで置き去りに
する、酷い奴みたいに思えてくる。
・・・全然、んな訳ねーんだが。
金色の頭をポリポリ掻きながら、自分の想像を頭から振り払う。「小さな子供」どこじゃねぇ。昨日の夜の、
あの鬼みたいな責めっぷりを見てると、スコールは、お前SeeD辞めてもそっちの商売で食っていけんじゃ
ねぇの?と言いたくなるような、立派な「男」なんだが。

だけど、どう見たってこれは寂しがってる。
下から覗き込むように、スコールの顔を見上げた。そして確信した。
絶対、寂しがってる。
自分が行ってしまう事を。自分が、この場から去ってしまう事を。
それを、まるで置き去りにされる子供のように寂しがってる。

ここは一発、決めなければ。
うーん、と腕組みをして思った。あいつ等だって、勿論大事だ。早く無事な姿を見せて、安心させて
やんなきゃと思ってる。だけど、スコールをこのままになんかして置けない。こんな寂しげなスコールを。
・・・・どーすりゃいいのかなぁ・・・・。
うんうんと頭を捻って、自分の中の記憶を攫う。なんか、いい言葉ねぇかな。寂しがりやで甘えたのこいつが、
笑ってくれるような言葉が。

自分の実家は、どうだっけ。
ゼルが故郷の町を思い出す。そしてふと、とびきりの言葉を思い出した。陽気で気のいい船乗り達が揃ってる
バラムの町。その男達が、遠い海の向こうに出港する前に、岸の恋人や妻達に投げかける言葉。
お互いの不安を吹き飛ばすように、明るく腕を振って告げる言葉。


よし。ちょっと・・・いや、かなり恥ずかしいけど、言うか。
ゼルが覚悟を決めて頭を上げる。まさかその言葉を、自分が男に向かって使う日がくるとは思わなかったけど。
ま、思う通りにいかないのが人生ってやつだ、ってじいちゃんも言ってたしな。
そう割り切りながら、ぐいと目の前の男の肩を両手で掴んで引き寄せた。驚いて顔を上げるスコールに、
顔いっぱいの笑顔で笑いかける。サファイアのような蒼い瞳に向かって、弾けるように明るい声で宣言する。


「・・・心配すんなダーリン!心はいつでも、お前んとこだ・・・!!」





スコールが大きな眼をパチパチと瞬かせる。
「・・・・・俺式愛の告白新バージョン。なんつって。」
ゼルが真っ赤になって、へへへと笑う。そして突然、うわーやっぱ俺駄目だ。そこまで修行足りねぇ。
はずかしー、と金色の頭をぐしゃぐしゃと掻いて跳び回る。
それを眺めるスコールの胸が、じわじわ温かくなっていく。信じられないくらい、心が熱く満たされていく。
ダーリン。ダーリング。愛しいあなた。心はいつも、俺のところに。
何て素敵な告白だろう。今の自分の寂しさが、塵のように吹き飛んでいく。


夢見るような心持ちで、にっこりと唇を綻ばせた。まだのたうちまわってる恋人に、笑いながら話し掛ける。
「・・・わかった。じゃあ行って来いハニー。遅くなるなよ。」
「!はに・・・っ!!あ、お、おう!!じゃ、行ってくるぜダーリン!」
ゼルが真っ赤になったまま、ドアに向かって勢いよく身体を翻す。痛てて、と右足をケンケンさせながら、
ふと何かを思いついたようにくるりと振り返る。
「帰ってきたら、どっか遊びに行こうな!」
それだけ言って、ぴょんぴょんと跳ねるように部屋を出ていく。その後姿を、微笑みながら見送った。


さて、どうするか。
スコールが大きく伸びをして思う。
どっか、って言っても、あの足だからな。大した遠出はできないだろう。て言うか、あの足でどこかに
遊びに行きたいと思う根性が凄い。そのエネルギーは一体どこから来るんだ。
仕方ない、自分が適当な所を探しておこう。
そうしないと、「じゃあこれを機に片足Tボードのマスター」とか、とんでも無い事を言い出しかねない。


それなら、どこへ行こうか。
スコールが楽しげに眼を細めて考える。どこでもいいな。どこでも行ける。ゼルと一緒なら、どこへでも
行っていい。
心はいつでもここにある。ゼルの心も、ここにある。
それならもう、行き先なんかどこでもいい。
二人で一緒に、決めていこう。二人で一緒に、歩いていこう。
見知らぬ道を切り開く、馬鹿で勇敢な冒険者のように。
二人でしっかり手を繋ぎ、二人で恋をしていこう。






END
novelのコーナーに戻る
TOPに戻る